(代表中里文子のコラム/2019.9.20)
今、不登校で悩んでいる中学生は全国で約11万人(文部科学省;2017)、隠れ不登校(保健室登校など)は33万人、あわせると44万人にもなり、毎年増え続けています。
以前は、不登校児の支援目標を「学校復帰」としていましたが、文部科学省(教育委員会)は従来の考え方を見直し、学校以外の学び場の設置の重要性を認めるよう方向転換してきました。その中で、子どもたち自身の新たな居場所となる「フリースクール」が注目を浴びてきたものの、その器になるフリースクールの数はまだまだ足りていないという実情があります。
新たな居場所、もう一つの居場所という意味で、「オルタナティブ教育」があります。オルタナティブ(alternative)には、「もう一つの」という意味があります。
オルタナティブ教育として世界中で注目されているものには、イタリアで始まった「モンテッソーリ教育」や、オーストリアの「シュタイナー教育」、ドイツで始まりオランダで発展した「イエナプラン教育」などがあります。その共通点は、「一人一人の発達や個性を大切にしながら、自律と共生を重視すること」です。つまり、「個の尊重」と「民主主義的発想」に着目しているのです。そのあたりが、日本の教育制度と異なる点かもしれません。ただし、日本の教育制度にも強い部分や弱い部分など、特徴があります。
日本の教育制度の強い部分は、「学力をつけることに重点を置く」「秩序や思いやりを重視する」などですが、どちらかというと弱い部分として挙げられるのは、「集団主義」「管理教育」「枠組みが強い」「自ら進んで考える力が乏しい」などかもしれません。
日本で不登校の子どもが多い理由のひとつは、効率性を重視したことかもしれません。一度にたくさんの子どもたちを教育するには、同じ教育ベルトコンベアーに載せて、同じことを同じペースで行うことです。すると何が起こるか?あっち行ったり、そっち行ったり…色々な個性を出す子どもが増えると、ベルトコンベアーはその度に停まり機能しなくなります。だから、人と違うことを嫌い、異質なものを排除する排他的思考が生まれるのです。個性を出すとはじかれる、学校教育という枠組みから逸脱してはいけないという、ある種の思い込みのようなものが子どもたちの生きづらさを生み、不登校児を増やしているのではないかと思います。
教育的枠組みを緩める、または外すとどうなるのでしょうか?もちろん、多様性(人それぞれの個性)を認めることになり、「これはこうである」「こうでなければならない」という枠=正解や答えがなくなるため、子どもたちは正解を気にせず自由に考えることもできるし、何といっても、自分が合っているのか、一人違ってはいないかどうかを気にする必要がなくなるというわけです。オルタナティブ教育では、「多様性を認める」「正解がない」という考えが根底にあります。
モンテッソーリ教育では、「秩序」「ワーク」が重視され、具体的には料理などの実生活体験を通して自信や自立心を養い、シュタイナー教育では、想像遊びが重視されます。例えば、絵本よりも「ストーリーテリング」が用いられます。イエナプラン教育では、「対話」「遊び」「仕事(学習)」「催し」を芯として学びを自ら組み立てます。オルタナティブ(alternative)とは、日本語で「もう一つの」という意味です。
オルタナティブ教育で課題になるのは、個の尊重と秩序の維持という一見逆に思えることをどう共存させていくのかということかもしれません。「もう一つの居場所」となるべくフリースクールに求められる課題は、そういったことなのでしょう。最も大事なことは、異なる外見や背景を持つ子どもたちが集まり個性を重視していく中にも、共通するものがたくさんあるということではないかと思うのです。そのあたりに目を向けながら、フリースクールづくりに活かせていければと思います。
今、柔道家の先生方を中心に、「柔道」「学習」「心理支援」という3本柱を軸として、不登校、発達障害児を対象にした新たな形のフリースクールを「品川区」に生み出そうとしています。HPでも随時ご紹介していきますのでチェックしてみてください。
それではまた。
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