(代表中里文子のコラム/2024.2.26)

「人がなぜ他者に協力するのか?(利他行動)」という研究の中で、人間以外の動物での「利他行動」は、ほぼ親子間、きょうだい間に限られると言います。赤の他人に対して「利他行動」が見られることは人間特有ではありますが、人間の「利他行動」にも特徴があり、その目的は「危機に備えるため」とされています。一つは、病気やケガなどに陥った時にお互い助け合えるというもの、もう一つは集団同士での戦いのときに協力し合える仲間を作っておくためとされています(清水教授 社会心理学 関西学院大学)。

危機の場面では、損得勘定に関わらず相手に手を差し伸べたり力を貸すのであれば、これは「無償の愛」なのでしょうか?清水教授によると、「見返りなく相手を助けられる関係は、お互いを唯一無二の関係だと認識していること」だと言います。ただし、人間の関係性に関しては、時代の流れや価値観により、一昔前と違って多様化してきたと言われています。

一昔前(昭和時代?)では、恋愛の延長線上に「家族」がありましたが、最近は「お互いが自分らしくいられる関係」が家族に求められるようになったのではないかと言われています。いわゆる、家族を「集団」と考えるか、「個人個人」と考えるかのような変化だと思います。だとしたら、親子の価値観のズレが生じるようになっても当然かもしれませんね。

1年間の中で、日本では今のこの時期は「受験シーズン」です。現在40歳代のある男性は自身の中学受験を振り返り、「今頑張ればあなたの将来は開けるのよ」とされ、小学3年生の時から塾に通い勉強を強いられてきたと言います。受験前の小6年末から、父親と弟はビジネスホテルで過ごしたと言います。なぜなら、会社や学校へ通う父や弟は、もしかしたらインフルエンザなどを運んでくるかもしれないとの懸念からだそうです。塾の友達の中には、母親から叩かれたり暴言を吐かれたりしているという人もいたようです。

こういった過度の指導を子に強いる親の特徴として、価値観の根底にある「辛いことを乗り越えれば心が強くなり夢が叶う」という精神論や、また、「自分の子どもはこうあるべき」といった高い自己理想を子どもに投影させるといった利己的な思考があるようです。

親の期待に応えられない子どもは劣等感を抱き自尊感情を下げ自罰的になります。あらかじめ親に敷かれたレールの上をひたすら走ることを強要され、「自分のやりたいこと・得意なこと・なりたいこと」が見えなくなってしまう自分に苦しんだといいます。「あなたの為だから」と必死に愛情を注ぎこむ親に対して、「愛されていることはありがたいと思うし、子どものために自己犠牲をしてまで尽くしてもらっていることは十分に分かっているし、それ自体は感謝している」のです。しかし、大人になって犬を飼うようになって初めて「愛おしい」という感情が自分にあることに気付いたといいます。

13歳の老犬を見ていると、近いうちにやってくる「別離」に耐えられず、思わず涙が出てきたといいます。申し訳ないけれど、両親に対して同じように「愛おしい」という感情がわいてくるのだろうか?自分を自由に表現することを許されなかったことに対して恨むまでは感じないけれど、自分の大切な親として愛せているのだろうか?無償の愛は抱けていないのではないか?

子どもに対して愛情を注ぐこと、期待すること、願うこと…そう思うこと自体は決して悪いことではないはずです。しかし、「過保護、過干渉、期待し過ぎる、過敏…」に共通するものは、「過ぎる」ことなのです。だとしたら、ペットと親に対する感情を分けてしまったのは何なのでしょうか。

親の立場から、「優秀な子を持ちたいという親の見栄から」「将来子どもに成功させたいという親心から」「学歴重視社会だから」「親が自分の経験を押し付ける」などが大きに要因となっているようですが、これらすべては「利他行動」ではなく「自己欲求充足」の為なのです。自分(親)の欲求や意見を通そうとすると相手(子)は自身の感情を「抑圧」するしかなくなります。この状態を継続すると、子どもは成長過程で対人関係スキルをうまく学ぶことができず、また、自身の感情を他者に伝える、表現する、吐き出すことができなくなります。ある意味、これも一つの「虐待」にあたります。

こうした中でカギになる概念として、「メタ・コミュニケーション」があります。メタ(上から・距離を置く)コミュニケーションは、お互いのコミュニケーションにおいて「違和感(おや?何か嚙み合っていないな、通じていないかな?)」を感じたときにうまく機能する手法です。「納得できていないですか?」「面白くないですか?」「分からない部分がありますか?」「言いたいことは言えていますか?」「ここまでどう思いますか?」などです。メタ・コミュニケーションを挟むことで、「たぶん分かっているはず」「普通はそう思うよね」といった自分に有利な勝手な推測を阻止することができるからです。

「子どものことは(母親としてずっと一緒にいた)この私が一番よくわかっている」「(私の経験から)私が言っていることは正しいに決まっている」という誤信念にまずは気付き、子どもが「本音」を吐き出せる状況をメタ・コミュニケーションで作ります。そして、会話においてヒントになることは、「クローズド・クエスチョン:閉じた質問(〇〇学校に受かりたいんだよね?というYesかNoで答える質問)」で話しかけるのではなく、「オープン・クエスチョン:開かれた質問(〇〇学校に行きたいと思うところはどんなところかな?など、説明が必要な質問)」を使うようにしてみます。
親子間でわざわざこのようなやり取りをしていくことはエネルギーのいることです。だからこそ、「やってみる」ことに価値があるのです。

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それではまた。

中里文子


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