(代表中里文子のコラム/2023.4.4)

寄付やボランティアではなく、ビジネスによって社会課題を解決する「ソーシャル・ビジネス」は、2006年にノーベル平和賞を受賞した国連SDGsの策定メンバーであるムハマド・ユヌス博士が提唱した考え方です。海外では、「ダノン」「アディダス」などがその取り組みに参加しています。ソーシャル・ビジネスでは、ビジネスで得た利益を自分たちのために使わず、問題を解決するために使うという特徴があります。

1.社会性:社会的課題に取り組むことをミッションとする
2.事業性:課題を解決することを目標にビジネスをデザインする
3.革新性:新しい社会的商品やサービスなどを提供するための仕組みを開発する

私は、株式会社の代表取締役と、特定非営利活動法人(NPO)の代表理事という2つのステージで活動しています。心理臨床における支援サービスを専門家として行っていくときに、株式会社(利益を得る)だけで事業を行うことに大きな抵抗を感じました。精神疾患やメンタルダウンで職を失った人に対して、カウンセリング(心理療法)の効果は大きいと分かりつつ、決して安くはないカウンセリング料金をいただくことは、心の中でしっくりせず葛藤を生み、むしろ罪悪感を抱くこともありました。そこで考えたのがNPO 法人(非営利)の設立でした。

NPO法人「こころんプロジェクト」には、青少年を中心とした心理支援において、2つの柱があります。ひとつは「こころんホットライン」で、引きこもり・ニートなど社会へなかなか繋がることができない青少年を対象にした無料相談電話(メール)と、もうひとつ「こころん柔道部」では、児童養護施設の子どもたちに無償で習い事としての柔道教室を提供する、という活動です。

この2つのステージでの活動によって心の安定は得られましたが、NPO法人の課題である資金繰りとして、常に「資金集め」に奔走させられることと、どうしても株式会社におんぶにだっこしてしまうという現状に苦しみました。社会貢献はできても、続けることができない…

そこで、ソーシャル・ビジネスとしての「柔道」を考えました。

1. 課題(テーマ)「誰一人取り残さない柔道」をめざす

感覚柔道だけではなく柔道科学に着目し、実践から得られた効果を社会のニーズに合わせ、柔道で解決していく。対象を、幼児、育児中の母親、児童・生徒、大学生、社会人、高齢者、障害者と、それぞれに見合った柔道指導をエビデンスを持ち提供する。

2. 目標 「柔道人口を増やす」

対象を日本の将来を担う「幼児」に絞る。ニーズに応じ、子どもの練習見学に来ている「親」も柔道練習に取り込み、「子どもにやらせたい」と思う柔道の魅力を自ら体得してもらう。また、見学を通じ、親の育児不安を積極的に受容する仕組みを作る。

3. 実践 「町道場」 に息を吹き込む(エンパワメント)

持続可能な共存共栄を「心・技・体」の視点から考える。「ボランティアによる指導を前提とした柔道教室」から、メンタルな部分には臨床心理士などを含めたプロフェッショナルなカウンセリングと、体づくりと技の部分には、体力と技術レベルに合わせた柔道指導を行う。「対価」を得て、持続可能な事業展開を実践する。

ここで重要になることは、事業展開していくにあたり、柔道ならではの「付加価値」をどのように前面に押し出していくかです。

柔道には「精力善用」「自他共栄」という言葉があります。「精力善用」は、柔道を通じて鍛えた心と体を世の中の良いことに使おう、「自他共栄」は、仲間を大切にし、自分だけでなく相手と共に成長していこう、という意味が込められています。私なりに「柔道」を評価していくとしたら「受け身」が象徴的ですが、「自分を大切にすること」ではないかと思うのです。私は、子どもたちが健やかに成長していくためには、「自分を大切にする」ことがとても大切だと思うのです。

ソーシャル・ビジネスとしての柔道には、そのあたりが求められてくると考えています。

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、万全の感染対策を最大限に取りながら、Webカウンセリングや大好評の専門職向けのZOOMセミナーなど、複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてぜひ、弊社LINEに「お友達登録」してご利用してみてください。皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子

※東京都柔道連盟HP  https://www.tojuren.or.jp/news/20230401.html


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