(代表中里文子のコラム/2019.8.20)

オーストリアの精神科医で神経病理学者のジグムント・フロイト(S. Freud)は、人間の心的過程の中には意識できない領域「無意識」が存在するとして精神分析学を創始しました。人は、思い出したくないほど辛い体験や、意識すると耐え難い苦しい経験などを無意識の領域の奥底に追いやり、その記憶を「抑圧」することで心の安定を図っています。

例えば、S子さんは人と話をするときに、いつも手で口元を隠します。本人はその癖に気づいていません。

S子さんは皆から「美人だね」といわれますが、自分が美人だと思ったことはありません。むしろ自分の顔にコンプレックスを持っています。

幼いころ、S子さんは美人のお母さんが自慢で、「お母さんに似ているね」と言われることが嬉しかったのですが、ある日大好きなお母さんから「S子は私と違って口が大きいね」と言われました。その一言でS子さんは自分の顔に自信を無くし、自分は口が大きく美人ではないと思い込んでしまったのです。

その苦痛な体験はS子さんの「無意識の領域」に押し込められ抑圧されていたため、皆から「美人だね」と言われるのに、自分としてはなぜ自分の顔にコンプレックスを持っているのかがわかりませんでした。ある友だちから「S子の癖はは手で口を隠すことだね」と言われ、初めて自分が口元にコンプレックスを持っていることに気づきました。

精神分析で無意識と呼ばれる領域は、「潜在意識」とも呼ばれ、一方、意識の領域は「顕在意識」とも呼ばれます。20世紀後半から、「潜在意識」に働きかける「サブリミナル効果」を利用した宣伝が相次いで禁止されました。「サブリミナル効果」とは、「意識としては認識できない非常に短時間で提示されるある知覚刺激は、潜在意識に対して一定の影響を及ぼすことができる」との説があり、その「効果」をサブリミナル効果といいます。

サブリミナルは人間の潜在意識に働きかけることで効果があるとされています。例えば意識できないほど短い間隔でコーラの写真を見せるとコーラが飲みたくなるという広告効果が話題になったことがあります。人間の脳は、「場違いなものが映りこんでいる」や「性表現」を認識しやすいという特徴があるため、サブリミナル刺激として不適切なものを(性的表現や宗教的な刷り込み(教祖など))埋め込む広告などが問題になり、海外ではサブリミナルが法律で禁止されている国もあります。

また、潜在意識に働きかけるという同様の効果に洗脳やマインドコントロールがあります。短く分かりやすいフレーズを繰り返し聞かされることで人間の脳は「分かった」ことにしてしまい、考えることをやめる習性があるといいます。例えば、災害時に繰り返し流される避難警告の公的広告などのように良い方向で使えば有用になりますが、新興宗教カルトの勧誘などのように悪用される恐ろしさもあり得ます。

マインドコントロール洗脳の影響を受けない、またはそれを解く方法として、以下の3点が重要になります。

  1. なるべく多くの人と話をする(多様な価値観、意見に触れる)
  2. 「白か黒」「善か悪」という二元論での思考を避ける
  3. 自分を客観視できるような状況を作る(専門家をはさみ、客観視などのワークをする)

人間の「無意識」の領域は、知らず知らずのうちに行動や思考(顕在意識)に影響を与えます。

不安や強迫観念などは「無意識」の領域にアプローチする「心理療法」が有効になります。

当オフィスでは、心理検査を使った自己理解の作業や、生きづらさに寄り添う心理療法カウンセリング(認知行動療法、精神分析的心理療法など)を行っております。医療との連携もありますのでお気軽にお尋ねください。詳細は、HPを是非、チェックしてみてください。

それではまた。

中里文子


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