(代表中里文子のコラム/2020.9.21)

 

最近、勤務体系が大きく変わり、自宅での「テレワーク」もだいぶ増えてきました。それでもどうしても出勤が必要な業務もあり、ソーシャルディスタンスをとりオフィスワークをしていると、どこからか話し声が聞こえてくる…。よくよく聞いてみると、「独り言か」とわかりました。「え?そういうこと?」「な~にやってんだ、俺…」「○○って言ってたじゃん、ウソかよー!」「あ、こうやればいいってことね!」…まあ、面白い!

私たちは、一般的には日本語を使って人と話したり文章を読み書きしたりします。しかし、そのような他者とのコミュニケーション手段としての機能を持つ言葉(外言)と、自身の心の中だけで考えている言葉(内言)には違いがあります。

内言・外言に関する定義は心理学者により違いがありますが、心理学者ヴィゴツキー,L.S.(露)によると、社会的言語としての「外言」は、その時の環境や相手によって日本語や英語などの文法に基づいた主語中心の言語が使われますが、思考のための言語である「内言」は、人それぞれ独自の形を持ち、省略や圧縮が多く、非文法的で述語が中心であるとしています。

ヴィゴツキーは、人の思考は他者とのコミュニケーション場面で生じる相互作用と切り離すことができないため、「言語発達は「外言」から始まり、外言が内在化されて「内言」へ転化していく」と考えました。つまり、考えてから言葉を発するのではなく、言語を使って他人とコミュニケーションをとるうちに外的な言語が獲得され、それが内言としても使えるようになってくる」ということです。

幼児期の「独り言」は、内言の発達過程において未分化で不完全な内言が発声(自己中心語)されたものであり、成長するに従い、言語として発声しなくても自身の思考が内在できる完成された「内言」として発達してくると考え、言語は「外言から内言へ」と発達(移行)していくとしました。

一方、大人の「独り言」は、「私的発話」とされ、自身の行動に影響を与える、つまり行動制御の役割を持つといわれています。こころの中で何かを考え、それを声に出すことにより聴覚を通し刺激を受け(インプット)、その言葉の意味を脳に貯蔵した情報の中から引っ張り出し(情報処理)、行動(行動を制御するなど)として機能する(アウトプット)というわけです。つまり、「インプット」⇒「情報処理」⇒「アウトプット」の過程を自身で行っているのです。

コロナ禍において働き方や対人関係の在り方が見直され、物質的には質素になったけれど、決して心が貧しくなったわけではないと感じる人も多いようです。一人になる時間、家で過ごす時間、与えられたものをうまく利用して「それなりに」楽しもうと思う気持ちなどが増え、生き方がシンプルになりスッキリしたからかもしれません。モノが豊かということと幸福感は必ずしも一致しないようです。かつての日本がそうでした。モノが豊かで不自由ない暮らしを送っているようでも、どこか人々はイライラし不安定で不機嫌そうで、「生きるって何なんだろう?自分って何なんだろう?」と思わずつぶやく。コロナ禍において人々が得たものの一つは、そうした問いへの答えである「生きること」の意味と幸福感「幸せのかたち」かもしれません。

かく言う私自身も、パソコンに向かうと何と独り言の多いことか…。時々別人格のように「マジ~?」「ヤバい!」と若者のような口調でつぶやきながら苦笑い。真剣な表情でスケジュールを仕事で埋め尽くしていたかつての自分からは想像できませんが、何か「楽」になったかも(笑)

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、万全の感染対策を最大限に取りながら、少人数の従来の形でのセミナーを中心に、リモートでのWebカウンセリングや大好評の内容のZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてぜひ、弊社LINEに「いいね」してご利用してみてください。皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子


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