(代表中里文子のコラム/2020.7.23)
教育相談に携わる中で、圧倒的に多い問題として「友達関係(人間関係)」からくるいじめや不登校などが挙げられますが、中でも「KY」といわれる「空気を読む」ことが上手くできないことでトラブルにまで発展するケースも少なくありません。
カウンセリングの中で、「空気を読むスキルを訓練したい」といわれたとしたら、とても困ります。行動変容だから「認知行動療法」の訓練?それとも、目に見えない「空気」を扱うから「精神分析的」な訓練?そもそも、「空気を読む」の「空気」って何でしょう?そして、その「空気」を読むスキルは訓練までするほど、生きていく上で重要なスキルなのでしょうか?「謎」過ぎです。
ただ、このスキル(?)が必要とされている時は「集団」の中であり、コミュニケーションをとるときであることは確かです。そして、日本古来の、「村八分」や「謙虚」「控えめ」「恥の文化」「奥ゆかしさ」などと関係がありそうなので、どちらかというと欧米の個人主義的な思考よりは、日本古来の集団主義的な文化に存在しやすい感覚といえるかもしれません。
「空気を読む」という行為は、集団内において多数決原理に同調するか、またはその場での支配者(長の人)の意に沿うよう振る舞うということで、同時にそれは「自分を抑える」ことになります。しかも、空気を読むことが必ずしもいい結果を生むとは限らず、こころの健康度から考えると「自分を表に出す」という点で、空気を読まない方が「自己肯定」につながり、健康度は高いと考えます。つまり、空気を読まなくていい社会の方が自分を抑えるといういわば自己否定をしなくていいという意味において、こころの健康度が高い社会であると言えそうです。何より、本音と建て前、裏と表がない分、こうかな、ああかな、と勘繰らずに済むので、生き方がシンプルですよね。ただし、デメリットもあります。社会の暗黙のルールから外れた行動を取ってしまい、周囲の人と相互的な交流を行うことが困難になります。最終的には孤立してしまう可能性もあるのです。
脳の発達機能に偏りがあるとされる発達障害のうち、自閉症スペクトラム障害(ASD)には3つの特徴があります。「社会性と対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動や興味の偏り」ですが、なかでも「社会性と対人関係の障害」では、具体的に次のような特徴がみられます。
- 視線を合わせることができない
- 周囲に関心がないように見える
- 相手の気持ちが分からない
- その場の空気が読めない
「空気が読めない」と、「空気を読まない」は本質的に違います。「空気が読めない」と社会性の欠如となり、対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。「空気を読まない」と自己中心的でわがままとされます。
もし、空気を読むスキルをUPしたいのであれば、それは察知する能力、イメージ力を磨くことだと思いますが、察知やイメージすることは個人の価値観や思想に影響されるため、「外してしまう」危険性があるのです。「今、ここでこれを言うべき、と思ったけど違った…」のように。では、空気が読めないならどうすればいいのでしょうか?
発達障害児支援の中で、私が常に伝えていることがあります。「空気が読めない子どもが問題なのではなく、空気を読まなければならない状況を作り出している周囲が問題です」と。「まずは、発言したいときは手を挙げるなどのルール付けをし、誰にでも理解できる「説明」や「言語化して伝える」ことをしっかりと行いましょう。特に、「怒っている」とか「嫌な気持ちになったよ」などの感情や気持ちは言葉にして伝えるよう心がけましょう」と。ルールの中で子どもたちは経験をし、成長していきます。「空気を読む」という曖昧で不明確な状況は、どんな人にとっても居心地がいいものではないですよね。ルールという枠組みで明確にしていくことで、不安感を軽減していくのです。「枠組み」は窮屈な「縛り」ではあるけれど、安全な「守り」でもあるのです。
コロナ禍において、うっかりマスクを忘れてしまったときの罰の悪さ…まるで犯罪者扱いのまなざしには耐えきれず、家まで取りに戻ってしまいます。スマホを忘れるより今は怖いです。でも、本当は周りの人は私を犯罪者のようになんて感じていないんだと思いますが。勘繰り過ぎ?「空気を読む」ってムズカシイ!
引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、リモートでのWebカウンセリングや大好評の内容のZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。併せて、万全の感染対策を最大限に取りながら、少人数の従来の形でのセミナーもご利用頂けます。HPなどチェックしてぜひご利用してみてください。皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。
それではまた。
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カウンセリングでは、ご相談者様の生きづらさに寄り添い、その原因となった出来事に対するものの捉え方、感じ方など内的な感情に焦点を当て、各種心理療法(精神分析的心理療法など)を用いて、ご相談者様の心の側面について内省を促し、生きづらさを解決していきます。
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