(代表中里文子のコラム/2022.9.26)

一昔前の日本では、小中学校のクラスに外国人の生徒がいると注目を浴びてしまいました。しかし、今や外国人の友達がクラスにいても違和感なく「普通」になってきたように思います。それでもなお、日本社会において「日本人である」という「本質主義:物事の芯なる部分は変わらないという考え。人種、民族、性別といったカテゴリーに不変的な性質があるとする」的な考え方は多く見受けられます。

例えば、「日本人って真面目だよね」という考え方は「本質主義的」な考え方になります。日本人の本質があたかも「真面目」であり、日本人であることは「真面目」という性質に規定され不変的である(変わることがない)という考え方です。すでにお分かりかと思いますが、真面目でない日本人はたくさんいますよね(笑)

この考え方を自分自身「自己」に当てはめてみます。「私は真面目である」というのが本質主義的な考えになりますね。「真面目であること」が私自身の芯(アイデンティティ)になってくるので、私が私であるために、私は何としても「真面目な自己」を信じ演じ続けることになります。すると、内的な感情に齟齬(違和感)が起こってくるため、これはしんどい生き方になります。

一方で、本質主義と反対の立場に「構築主義」という考え方があります。構築主義とは、「人間集団やカテゴリーに不変的にあるとされる特徴は、実は社会歴史的に構築されたものであり、可変的であると考える立場」とされています。つまり、簡単に言うと、人は社会生活の中で成長していく過程において様々な体験を通し、自己は絶えず変化していくものであるということです。この考え方は多くの心理学精神分析人間性心理学ポジティブ心理学など)に共通する考え方です。構築主義的な考えは、ドイツの哲学者カントヘーゲルなどに起源をもつとされます。

構築主義的な考え方をすれば、固定的、不変的な「私」は存在せず、常に私は「変化し続けている」ため、「今は~だけど、これから〇〇になれる」というように、自己は可変的であり「何かになる(なれる)」過程にあるのだから、「可能性」を信じよう、となります。大事なことは、「可変的(変わりうる)」ということです。過ぎ去ってしまった「過去」は変えることはできませんが、これからやってくる「未来」は可変的です。

人が将来に目を向ける時、「~になったらどうしよう…」「全部がダメだったらどうなるんだろう…」というように多少の不安感(心配)が心の中にやってきます。不安感の正体は、「先が読めないこと」「分からないこと」「コントロール不能なこと」「孤独」「自信が持てない(信用できない)こと」「見えない敵への恐怖感」などです。それらの感情を解消するため、人は過去の記憶(経験)と照合しようとします。または、同じような状況にある「他者」と比較して情報収集しようとします。この時、「どのように照合するか・どう比較するのか」が問題になります。

人が過去の体験や経験と照合するとき、「不変的な過去」に注目するのか、「可変的な未来」に焦点を当てるかによって心の状態(健康度)は大きく違ってきます。過去の失敗体験を例にすると、「皆の前で意見を言ったら、言いたいことがちっともわからないと否定されてしまった」に対して、不変的過去にとらわれてしまうと、「また意見を述べると否定されてしまうんじゃないか」と人前で意見を述べることが不安になり、「発言はやめよう」となってしまいます。一方で、可変的未来に焦点を当てると、「この前はあのような発言をしたら否定されたのだから、今度は違ったやり方をしてみれば受け入れられるかもしれないな」となりますね。そう考えると一見、簡単なようですが、長年かけて築いてきた自身の思考の癖を変えていくのはそう容易いものではないかもしれません。

いつも不安感が強い人は、過去の経験にとらわれ「可変的な未来」に目を向けることがなかなかできていないのだと思います。そうしたときは、まずは深呼吸します。何度も何度も深呼吸します。そして、自分の胸の中で小さく縮こまって不安に怯えている「内なる自己(名前を付けます。私は「リトルアヤコ」と呼んでいます)」に声をかけます。「そうだよね、リトルアヤコ…明日の発表は不安でたまらないよね。よく分るよ~。じゃあ、一緒にどうすればいいか作戦会議をしない?」と寄り添います。

不安感(状況不安(どうしてよいか分からない)、感覚不安(孤独やいじめなどの出来事に耐えられない))を軽減するための方法は、主に3側面から対処できます。

  • 「心の支えになる人がいる(相談できる、見守ってくれるなど)」親、家族、友人知人、無料相談電話など
  • 「先の見通しが立つ(スケジュールを立てる、リハーサルする)」人生設計、SSTソーシャルスキルトレーニング)、個別面談、家庭訪問など
  • 「具体的な手立てがある(援助モデル、成功体験)」お試し就労体験、職業訓練、ボランティアなど

いつでも相談に乗ってくれて冷静に考えてくれる人(専門カウンセラーがいいと思うけど…)がいるとか、本番前に実戦さながらリハーサルを行うとか、お試し体験ができるとか、そういったことが不安感を軽減し、安心できる状況へ繋がります。そして、「お守り」を持つことです。「これをいつも持ってるから大丈夫」とか、「3回呪文を唱えたから大丈夫」とか、アスリートが良くやっているようなことです。ちょっとした工夫で、不安感はぐっと軽減できるはずです。

カウンセリングやセミナーの中でも、「感情コントロール」や「ストレスマネジメント」「アンガーコントロール」は大きなテーマです。専門的なスキルや知識について学ぶセミナーも多数あり、ある意味、訓練やトレーニングでカバーできる部分は大きいと感じます。気になればどうぞお試しに参加してみてくださいね。

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、少人数の従来の形でのセミナーと、リモートでのWebカウンセリングや大好評の「自分探し講座」などのZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてみてください。また、弊社公式LINEアカウントでは、セミナー情報などを随時配信しております。是非、弊社公式LINEアカウントに「お友達登録」してみてください。

皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子


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