(代表中里文子のコラム/2019.1.20)

「…よろこびに触れたくて明日へ 僕を走らせる「es」…」

「…よろこびに触れたくて明日へ 僕を走らせてくれ 僕の中にある「es」 」

これは、Mr.Children の[es]〜Theme of es〜という曲の歌詞の一部です。「es(エス)」とは何でしょう?「僕の中にある」、そう、自分の中にあるのです。

S.フロイトが提唱した精神分析学では、人間の精神機能(心の機能)を「エス(または、イド)」「自我」「超自我」という三つの機能の相互作用として捉えています。

「エス」は、人間の動因となる本能エネルギー(性衝動(リビドー(生の欲動):動物は種の保存という生殖を目的とする)と、攻撃性(死の欲動)が発生していると考えられている)の源のようなもので、全ての「~したい」「~が欲しい」というような本能的欲望や生理的衝動が湧き起こる部分です。三大本能(食欲、睡眠欲、性欲)がエスの基盤となり、快楽を求め不快や苦痛を回避するという「快楽原則」に従います。生まれたばかりの赤ちゃんは「エス」に基づいて生きているため、「おっぱいちょうだい!(食欲)」「眠いからだっこして!(睡眠欲:安全な場所で寝ないと、食べられてしまう。だから眠いのに泣きます)」「おむつが汚れたよー、暑いよー、痛いよー(性欲)」というように、不快な感情を回避してくれ、とオギャーと泣いて訴えます。

「超自我 super ego」は、ルールや道徳観、倫理観、良心、禁止、理想などを自我とエスに伝える機能を持ち、エスを制御する役割を持ちます。「エス」が子どもと例えると、「超自我」は親なる部分とも表現され、父親の理想的なイメージや倫理的な態度を内在化して形成されると考えられています。一般的には無意識的であり、完璧を目指します。また、超自我は、悪いことに対して罪の意識と共にこらしめるようなある種の良心であると考えることができます。例えば、不倫関係に対する罪の意識など、「内的な批評家」を概念化したもので、社会的に容認される行動を行うように自身に仕向け、私たち自身が社会に適合するのを助けます。超自我は自我の一部であり、意識的、無意識的に働きます。本能の満足を社会に適応的に断念させたり延期、迂回させたりするという「現実原則」に従い、自我に良心を植え付けます。

「自我 ego」は、エスからの要求と超自我からの要求を受け取り、外界からの刺激を調整する機能を持ちます。無意識的防衛を行い、エスからの欲求、欲動を防衛(欲求などを無意識の中に抑え込むこと)したり昇華(社会で認められない欲求を、小説や絵画・彫刻などの芸術作品などの高い価値観で実現すること)したり、超自我と葛藤したり、従ったりするというように、調整的な存在です。全般的に言えば、自我は、エス・超自我を調整して、「私」という人間を外界に表現していくような役割をします。自我は主に無意識的に働き、幼い頃は「快楽原則」に従い、3~4歳ころから成長とともに「現実原則」に従うようになります。その頃になると、「自我が芽生えた」という表現をしますね。

人間はいつも自らの本能的欲求をすべて満たせる訳ではなく、大部分はその場で生じた欲求や衝動を我慢して諦めるか、またはその欲求を実現する為の手順や方法(自我防衛機制)を考えて、時間をかけて欲求充足を果たしていきます。キレやすい人たちや他者に迷惑や被害を与えて何の反省もない人、犯罪行為に対して罪悪感のない人、殺人により自己の欲求を充足する人たちは、ある意味でエスの行動原理である快楽原則に従っているのですが、周囲に迷惑や被害を及ぼす自己中心的な行動、快楽獲得の為の凶悪犯罪等は当然許される訳はなく、文化的な社会生活を営めるように自我や超自我の機能を高めて、精神的に成熟していかなければならないでしょう。人格や行動変容はカウンセリング(心理療法)でしか対応できません。薬物療法の領域ではないのです。

当オフィスでは、心理検査を使った自己理解の作業や、生きづらさに寄り添う心理療法カウンセリング(認知行動療法、精神分析的心理療法など)を行っております。医療との連携もありますのでお気軽にお尋ねください。詳細は、HPを是非、チェックしてみてください。

それではまた。

中里文子


こんなことでお悩みの方・・・・・専門家のカウンセリングを受けてみませんか?
カウンセリングでは、ご相談者様の生きづらさに寄り添い、その原因となった出来事に対するものの捉え方、感じ方など内的な感情に焦点を当て、各種心理療法(精神分析的心理療法など)を用いて、ご相談者様の心の側面について内省を促し、生きづらさを解決していきます。
● 自分のこと(家族や友人にも話せない心の悩み、ご自身性格のことなど)
● 家族のこと(親との関係、夫婦関係、子どもとの関係、子どもの発達障害など)
● 仕事のこと(ストレス、ハラスメント、職場の人間関係などなど)
● キャリアのこと(就職、転職、離職、復職など)
カウンセリング・心理検査のご案内はこちらから