(代表中里文子のコラム/2018.9.20)
発達障害者支援法(2005)における「発達障害」の定義は以下の通りです。
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
米国精神医学会による診断の手引きDSM-Ⅳでも、上記のように「アスペルガー障害(症候群)」の名がありましたが、2013年のDSM-Ⅴではアスペルガー障害の代わりに、自閉症スペクトラム障害(ASD)となりました。しかし、アスペルガー障害がなくなったわけではなく、単に名前が変わったという認識でいいかと思います。
発達障害の原因は、今のところ遺伝的な要因が影響している脳の機能的な障害によるものではないかと考えられており、症状や問題と感じていることは各人の特性、年齢によりまちまちですが、以下が発達障害児(者)によく見られる特性とされています。
①『対人関係の障害(社会性の障害)』
②『コミュニケーションの障害(言語機能の発達障害)』
③『イマジネーションの障害(こだわり行動と興味の偏り、固執性)』
自閉性障害は①~③すべてを示し、アスペルガー障害は①と③は満たしますが、②はあまり顕著ではないとされます。具体的な困りごととされるものには、以下のことが挙げられます。
- 言葉の遅れ ・感覚過敏、感覚鈍磨 ・強いこだわり ・変化が苦手 ・癇癪・自傷行動
- 忘れ物不注意が目立つ ・我慢できず行動のコントロールできない ・学習面での困難
- 周囲とのコミュニケーションが苦手 ・不器用 ・運動面の遅れ(発達性協調運動障害)
発達障害児(者)の困りごとは、能力に凸凹があることでしょう。凸凹があるというと、皆さんは凹の方、つまり「できない・不得手」に目が行くかと思いますが、実は凸が生きづらさにつながっているのです。例えば、「感覚過敏」ですが、聴覚:聞こえ過ぎる、視覚:見え過ぎる、記憶力が良過ぎる、など「過ぎる」はとても苦しいことです。不要な音まで日常的に入ってきたり、耳鳴りに苦しんだり、また蛍光灯や光がまぶしかったり、洋服のタグが肌に触れることが気になったり…それゆえ極度の恐怖心、不安感を持つ人が多く、そのため変化が苦手でこだわりが強いという行動になって現れてきます。思うようにいかなければ、または恐怖心からかんしゃくを起こしたり、怒りとなって攻撃をしたり…アスペルガー傾向の人は怒りっぽいといわれるゆえんです。また、他者からどう見られるかという自己の客観視ができにくいため、「空気が読めない」「自己中心的」と言われます。他者からどう見られるかを想像できないために、自己の本能のままの行動をし、時にはぶつぶつ大きな声で独り言を言い、言いたいことをはばからず言ってしまい非難され、自身の世界の中で生きているように見えるため、「自己愛(ナルシスト)」とみられます。
ただ、この凸の能力が秀でている発達障害児(者)は、サヴァン症候群と言われ、映画「レインマン」やドラマ「グッド・ドクター」などでその特性が紹介されています。
いずれにしても発達障害の診断は、その特徴的行動を示し、さらに本人の「困り感」の大小が診断基準に影響します。また、発達障害への対処・治療には大きく分けて「心理的・療育的なアプローチ」と「薬による治療(薬物療法)」があります。心理的とは、つまり心理検査に合わせて心理療法やカウンセリングのことであり、薬物療法は、医師による診察・投薬になります。
近頃、社会に出てから、「職場で浮いている」「仕事が続かない」「人とうまくやれない」「ミスが多い」などのように訴え、当オフィスで心理検査を受けられる方が増えました。心理検査は、その個人の得手・不得手が明確になり、自身の適性に気付けるという特徴があります。発達障害の診断のためではなく、「自身を知る」という目的のために心理検査を受けてみることは、アリだと思います。自分自身を知る、自己理解はとても実り多いことです。
当オフィスでは、子どもまたは大人を対象に、医療と提携した心理検査、発達検査(ウェクスラー式知能検査:WISC(子ども用)、WAIS(大人用)など)、多数ご用意しております。HPを是非、チェックしてみてください。
ではまた。
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