(代表中里文子のコラム/2022.2.28)

「gift」の名詞としての意味は、「贈り物、進物、(…の)賜物、恩恵、天賦(てんぷ)の才能…」で、動詞、他動詞としては、「〈人に〉〔…の〕贈り物をする,〈人に〉〔…を〕授ける,〈人に〉〔…の性質を〕賦与する…」、形容詞としては、「天賦の才のある,有能な…」となります(weblio)。

そこから派生した言葉で、心理学領域で、ある特定の(主に)子どもを指す言葉に、「ギフテッドgifted)」があります。「ギフテッド」とは、「学問や言語能力、芸術、創造性、リーダーシップなどのさまざまな領域の特定分野において、同年代の子どもと比較して突出した才能を持つ子ども(米国連邦法定義)」とされています。つまり、特定分野で特出した才能を持った子どものことで、その識別には「知能検査:ウェクスラー式知能検査※など」により、IQ130以上という基準が用いられますが、知能検査の値だけで判定されることはありません。実際にはIQでは測れない能力を総合的に判断していきます。

※「ウェクスラー式知能検査:WISC-Ⅳ(5歳0カ月~16歳11ヶ月)、WAIS-Ⅳ(16歳0カ月~90歳11カ月)

日本では、近年ようやく「発達障害」の概念が浸透してきたレベルで、学校教育でも「合理的配慮」といった形での支援が行われるようになりました。それでもまだまだ理解と支援は立ち遅れていて、「変わった子」「躾がなっていない」などの差別を受けることも多いのが現状です。その中でも特に、「ギフテッド」に関しては、高IQであるがゆえに、「頭がいいんだからいいじゃない」とされ、ギフテッド教育の先進国であるアメリカからすれば、半世紀ほどの遅れをとっているように思います。

「特出した能力」を持つということは、彼らの特性には凸凹があるということであり、発達障害と診断されることも多いのです。つまり、「特定の分野に優れている」と同時に、「他の分野は苦手」となり、「2E(Twice exceptional):二重に例外的な、という意味を持つ」であるが故の「生きづらさ」もあるのです。

例えば、ギフテッドの特徴として、

  • 記憶力が非常に良い
  • 注意・集中力が長く続く
  • 語彙が通常以上に豊富で、複雑な文章を構成できる
  • 数字遊び、パズルなど、問題を解くのが好き
  • 深く激しい感情や反応を表す
  • 物事に過敏である
  • 人に探りを入れるような質問をする
  • 幼少期から理想や正義感を持っている

などですが、前半に示した特徴は「良さ」として捉えることができますが、後半に示した特徴は社会生活の中で他者との関係において「生きづらさ、合わなさ」として現れ、孤立してしまう可能性があるのです。記憶力の良さ、音感の敏感さ、匂い・味覚・触覚の鋭さは「知覚過敏」からくるため感受性が強く、「過敏」の「過」は「~し過ぎる」というように苦しさに繋がる可能性が高いのです。

人間って本当にうまくできていますね。自分にとって不要なものは忘れていき、がやがやと大勢の中にいても大事な相手の声は集中してキャッチでき、ある程度の舌触りや味覚、肌触りや着心地には次第に「慣れて」いき、環境に順応し適応していきます。しかし、「過敏」であるため慣れることに難しく、そのことに囚われこだわり、不安感も強いのです。論理的な思考ゆえに理屈で話をし、学者のような話し方をするため、「子どもらしくない」「生意気」「屁理屈」とされてしまうのです。

特出する、目立つ、皆と違うなどを嫌う日本では、こういった「ギフテッド」はたちまち皆から「浮いて」しまい、孤立してしまう例が目立ちます。孤立孤独、皆から理解してもらえないという感情は自尊感情を下げ、自身の生きる意味や存在価値を見出せなくなって希死念慮を抱くギフテッドの子どもも少なくはありません。

ギフテッド教育先進国であるアメリカ(1868年セントルイス~)では、1958年国家防衛教育法(National Defense Education Act)でギフテッドの定義がなされ、それ以降、ヨーロッパやアジアの国でもギフテッド教育を取り入れている国は増えています。基本方針として、「効果的に才能や能力(凸の優れた才能)を開発し伸ばしていく教育」を目的としています。アメリカでの3つの主な教育は以下の通りです。

  • エンリッチメント教育(通常クラスに在籍し、特化した科目では難易度の高い課題を提供する)
  • プルアウト教育(通常クラスに在籍し、定期的にギフテッドの子どもたちが集まる学校で学習する)
  • アクセルレイト教育(「飛び級」と言われるもので、上の学年に在籍、早期卒業進学への対応)

日本では、公官庁や大手商社など、高学歴で入社する人が多い企業には一定の割合で「ギフテッド」が見受けられます。また、トップアスリートや芸術家なども「ギフテッド」が占める割合が多く、企業内で人との関わりにおいて孤立してしまうケースも難しくありません。企業にとっての「宝」であるはずのギフテッドが活かされていないのです。大人になってからの支援や訓練は時間やエネルギーを要します。だとしたら、子どものうちに「ギフテッド教育」につなげ、生きづらさへの対応や本人の自尊感情を保つことなどの周りからの支援、教育の提供は重要になります。併せて、ギフテッドを含めた発達障害児(者)への心理的支援は重要な要です。心理カウンセリング(発達障害等専門家)に繋がることが、その後の人生を楽に豊かにしていくことになります。

日本では、専門家による支援の手もまだまだ少ないと実感しています。しかしながら、専門家に繋がり、心理検査などで総合的に、客観的に自身の特性を知り(自己理解)、その後の対策をしていくことは可能です。例えば、心理職として「意見書」を書き、学校(会社)への理解を促していくなどです。大いに専門家を利用してください。一緒に「最善」を考えます。

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、少人数の従来の形でのセミナーと、リモートでのWebカウンセリングや大好評の「自分探し講座」などのZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてみてください。また、弊社公式LINEアカウントでは、セミナー情報などを随時配信しております。是非、弊社公式LINEアカウントに「お友達登録」してみてください。

皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子

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