(代表中里文子のコラム/2018.10.20)

今回は、発達障害の中で最近特に注目されている「ASD自閉症スペクトラム障害)」と「ADHD/ADD注意欠如多動性障害)」と夫婦の関係についてのコラムです。

ご存知の通り、発達障害は「病気」ではなくその人の先天的な「特徴」とされていますが、ASDの対人関係の大きな特徴として、以下が挙げられます。

  • 相互の対人的・情緒的関係の困難
  • 非言語的コミュニケーション行動の困難

つまり、その人の脳の特徴として、相手の気持ちをくみ取り理解し共感することや、表情などの非言語的な情報を理解することが得意ではありません。特に、育った環境も、もともと持っている気質的、性格的なことも全く違っている他人同士が一つの家族になり日常生活を送る「夫婦」の関係には、大きな困難がありそうなことは容易に想像できます。発達障害は、女性よりずっと男性に多いということから、実際にASDの夫を持つことによる定形発達の妻のストレス状態は「カサンドラ症候群」と呼ばれています。

人と人とのコミュニケーションは70%が非言語ですが、非言語コミュニケーションを苦手とするASDの人は、言語コミュニケーション30%の部分だけで相手の気持ちを判断しているわけです。例えば、謙遜して『つまらないものですがどうぞ』と言ったら、通常は非言語のメッセージを読み取るため文字通りに理解することはないですが、ASDの人は文字通りにメッセージを理解しかねません。特に、「以心伝心」「目でものを言う」「顔色をうかがう」など、非言語メッセージが得意な日本文化の中では、ASDの人は「空気が読めない変な人」とされてしまいがちです。ASDの人は、言葉と裏腹の非言語のメッセージは読めないのです。ということは、非言語の部分を言語化すればよいということになりますね。

「例えば、子育てでてんてこ舞いの奧さんが、雨が降ってきたのでため息をつきながら洗濯物を取り込んでいるとします。「私は子育てでこんなに忙しいのに、なんであなたはテレビを観て笑っているの?あなたには思いやりってもんがないの?」と怒りをためてしまうところですが、ASD夫には「奥さんの気持ち」を読み取ることができないのです。ため息のような非言語手段では気持ちは伝わらないのです。ASDの人からすれば、「助けてほしいと言っていないのだから助ける必要はないんだな。テレビでも観てるか…」と考えます。『私は子どもにミルクをあげているの。おむつも取り換えなくてはいけないので、洗濯物を取り込んで畳んでくれると助かるわ!』と心の声を言語化すればいいわけです。どうしてほしいか全て言わないとわからないのです。

ASDのパートナーとの付き合い方で大事なことは、言語化とお互いの距離です。特に言語化は具体的であることです。例えば、大事なことを決める場面で「早く決めて」と言われると、頭の中で想像することが苦手なASDの人は、混乱してフリーズします。「○○についてYESかNOか、来週の日曜日の夜ご飯までに決めてね」と言えばいいのです。「早く」というあいまいな言葉が混乱をもたらします。逆を言えば、具体的に提示することで、ある意味、「躾ける、習慣づける」ことができるわけです。もともと、ASDの人の特徴として、「こだわり」や「繰り返し」が強いことが挙げられますから、パターン化をしてあげればいいわけです。ただし、バラエティ豊かなことを望む女性にとって、毎回「同じ」ことを繰り返す男性は、うんざりするかもしれませんね。そういう時は、またまた「言語化」すればいいのです。「イチゴショートケーキはもう飽きたから、今度はチーズケーキにしてね」と。「こうして欲しい」ということが映画やコマーシャルでそのモデルとなっていれば、それを見せて「こういうのがいいの」と伝えます。言語化や視覚化は、ASDの人にとって理解しやすいのです。

そして、うまくやっていくためには、お互いの「距離」が必要です。つまり、一緒に居ない時間を持つことがストレス軽減のコツになります。離れることでお互いを客観的に分析し評価できるからです。これは子育てにも言えます。思春期の子どもとの距離に似ているかもしれませんね。

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それではまた。

中里文子


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