(代表中里文子のコラム/2022.4.6)

「大切な服にコーヒーをこぼされ、思わず声を荒げて責めてしまった」「ダイエットを頑張っているのに、友だちに流されスイーツブッフェに行ってしまった」など、自身の感情や行動のコントロールが効かずに反省したという経験はありますよね。このように、自分自身を制御する力のことを「自制心」と呼びます。

自制心は人生の割と早い段階で現れ、将来的にもずっとかかわってくる能力です。その初期段階として、自身の欲求(本能)をコントロールする能力は、「トイレットトレーニング」として現れます。3歳くらいで初めて自分自身の体を自分でコントロールして、うんち(おしっこ)したいと感じたらすぐにおむつにするのでなく、トイレまで「我慢」してトイレできちんと排出する、というコントロール(自制)力です。

精神分析学(S.フロイトによって提唱された心理学の一学派)では、「ああしたい・こうしたい」という本能的欲求のことを「エス(イド)」と呼び、欲求を上手い具合に調整する(自制する)役割を「超自我」と呼びます。人は無意識的に自己の欲求を調整して「自分(自我)」として現します。

例えば、エス「このクッキー美味しいな。2枚とも食べちゃおうかな」 超自我「ダメだよ、弟の分だぞ!」 自我「そうだよな。1枚で我慢しよう」といった具合です。

また、自制する(我慢する)ことは、「報酬を先延ばしにする能力」でもあります。報酬とは「よく頑張ったね」「上手にできたね」という賞賛や評価のことです。すぐに答えや結果を得ようとするのでなく、頑張る・我慢して続ける(自制)ことで、大きな成果(賞賛や評価)が得られること、例えば、上達に時間がかかる「学び」などのことです。

最近のゲーム世代の子どもたちは、「練習を続けて上達する(段が上がっていく)柔道など」「クラッシック系楽器を使う音楽教室」などの習い事を好まない傾向にあるため、そういった上達が見えにくい習い事の生徒数が激減しているとのデータがあります。また、じっくり修業を積む職業(大工職人や陶芸家など芸術職人など)も敬遠されるようです。なぜなら、今どきの子どもたちは、即座に手に入る「報酬」(ご褒美、評価、いいね!など)に慣れてしまっているため、すぐに上達しない、結果が出ない習い事や仕事にじっくり取り組むことができず辞めてしまう傾向にあるといいます。つまり、なかなか結果がでなくても、頑張ったその先には何か結果として現れるということを想像しにくいのだと思います。

また、シールやポイントをじっくり貯めて大きなものをご褒美として得るより、今得たポイントがその買い物でわずかだけど即座に値引きされる方を選ぶ方が気が楽だからです。「じっくり貯めておくうちにポイントが消えたらどうしよう…」「ポイントが無効になったらどうしよう…」など、「抱えておく、我慢する、報酬を先延ばしにする」ことには、不安がつきものです。その不安を抱えておく力が「自制心」ですが、ここが育っていない子どもが増えていると感じます。

自制心が育たないと、

  • 感情のコントロールができない:すぐにキレる、ネガティブな感情を相手にぶつける
  • 物事が継続できない:塾や習い事などの挫折
  • 誘惑に負けてしまう:つい、楽な方へ流れる、選ぶ

その結果として、

  • 周囲からの信頼を失う
  • 感情に常に振り回されるため、心が疲弊する(弱る)
  • 夢や結果(成果)が得られにくい

自制心は一朝一夕で高めることができないため、自制心を育てるためには、トレーニングとして日常的に(ルーティン)生活の中に取り込んでいくことをお勧めします。具体的には、

  • 感情のコントロール:特に、「怒り」のコントロールです。すぐに上手くできないかもしれませんが、嫌なこと、むかつくことがあったときには、両手の親指を内側に入れ、両手をぐっと握りリズムを刻んで「1,2,3…10」を心の中で数えます。そして「なるほどね…」と、名探偵コナン君になったような気持でつぶやきます。そして、自分は相手に何を望んでいるかを言語化してみるようにします。例えば、「…それでさ、服汚れたんだけど、どうしてくれるの?」と聞いてみたり、「クリーニング代持ってくれますか?」と聞いたり。
  • 物事の継続、誘惑に負けない:自分自身の毎日の生活にルーティンとして組み込む。例えば、プチダイエット例で、○時に起きる⇒○時にヨーグルト+はちみつ、バナナ1本⇒○時にストレッチ15分⇒○時にシャワー…のように書いた紙を、必ず毎朝チェックするPC画面に張っておくなど。特に、やるべきことは、何を何グラムというように具体的に細かく書いておくことが大事です。キーワードは、「スモールステップ目標設定」「具体的にシンプルに書く」が大事になります。視覚化できる「メモ」は重要です。

また、人に対しての怒りや絶望感といった感情は他者に期待している度合いが大きいことでそのギャップにより生じます。コツは、相手に過度な期待をしないことです。「しょせん人間なんていろんな人がいて、思うようにいかない」と思うことですか…笑。ぜひ、取り組んでみてください。

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、少人数の従来の形でのセミナーと、リモートでのWebカウンセリングや大好評の「自分探し講座」などのZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてみてください。また、弊社公式LINEアカウントでは、セミナー情報などを随時配信しております。是非、弊社公式LINEアカウントに「お友達登録」してみてください。

皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子


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