(代表中里文子のコラム/2017.12.20)
発達に障害のある子どもの親はどのように障害の状態を認識し受容するのかという研究の中で、日本の母親と欧米の母親(※一般的な)の違いのベースになっているひとつには、子どもとの距離が関係しているのではないかとの見解があります。
欧米の母親は一般的に宗教的な考えから、「子どもは神様から授かった神様の子ども」という考えがあり、母も子どもも兄弟姉妹も神様の前では「平等」と考えます。そのため、生まれてきた子どもに対しても「一個人」という考え方をするようです。この考え方は、個人尊重主義につながり、全ての人は「対等」「平等」であり、「個」を尊重します。
一方、日本の母親は、「私から生まれた私の分身」という感覚を持つため、あたかも子どもは自分自身の一部(分身)であるかのように「所有権」や「支配権」を背景にした子育てをするため、子どもの自主性や独立心は育ちにくい環境になりがちです。親からみれば「守り」であっても、子ども側からみれば「束縛」と感じることも多くなり、親からの自立、子離れがうまくいかずに依存関係が続くことにもなります。「ママの言う通りに」「ママにちゃんと教えて」と自主的に考えることをさせずに親に守られて育った子どもに、「自主性」「独立心」「自考」を期待するのはおかしな話です。
そういった環境から、日本の母親は子どもとの距離を適度に保つことが難しいと感じることが多く、さらに子どもが小さい場合は自身の「アクセサリー」として子どもを捉えるため、子どもが引っ込み思案だったり成績が悪かったりすることは、あたかも自分の評価であるかのように苦しみます。特に、早期教育のプログラムに邁進している母親たちが自分の子どもを自身の分身のように扱い、意のままにコントロールしている姿は違和感があります。女の子を持つ母親は、自分が今までできなかったことを子どもの人生で「生き直し」しているかのようです。
そんな中で、子どもに発達的な遅れがあったり、何らかの障害が疑われたりすると、自身が今まで理想として描いていた「私の子ども像(イメージ)」を失うわけです。「なんでよりによって私の子が…」「私が何をしたっていうの!なんで私の子どもなの!」とカウンセリングの中で泣き崩れる母親を何人も見てきました。「私の人生はこれで終わった…」と。
さあ、ここからが親子カウンセリングの始まりです。まずは母親の悲しみを受容し、独りで立てるように寄り添いエンパワーしていきます。それには、3つのたまごが大事になります。「からだ」「こころ」「ちしき」の3つのたまごです。この続きは、「むうふう(※)」でお話ししますね。
それではまた。
※ 「むうふう」は、NPO法人こころんプロジェクトへ事業移管いたしました。
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