(代表中里文子のコラム/2018.1.22)

「F子48 歳女性。料理専門学校を出て、20代の頃はチェーン店のパン屋に勤めていたが、結婚を機に退職。すぐに子どもに恵まれ子育てに専念していたが、離婚を機に食品卸売会社の事務員として勤務し、現在 14年目になる。

以前と違い近年での事務業務はパソコンでの作業が中心で、ソフトウェアも毎年新たなものが導入され、色々と覚えることが多くついていくのがやっとで、今後も今の仕事を続けることは難しいと感じている。一人息子は昨年大学を卒業し、就職先で地方に転勤になったため、現在、F子は一人暮らしになった。また、肩こりや視力の衰えなどもあり、疲れやすく働く気力が落ちてきているような気がする。今後の働き方について相談したい。」

キャリアコンサルティングのケースです。「キャリア支援」として捉えれば、「経済的基盤としての仕事」であった子育て期が終わり、子どもが自立した後のセカンドキャリア、つまり、「自己実現としての仕事」におけるキャリアビジョン(自分は将来これからどう働きたいか、どんな仕事をしたいか)を明確にしていくことが中心となります。シングルマザーとして子どもを育てていくための「仕事」から、今度は自身が本来やりたかった仕事、なりたかった職業に焦点を当てます。「料理専門学校を卒業した」というところがキーワードになります。

産業医として医学的に見てみるとどうでしょうか?「色々と覚えることが多くついていくのがやっと」「肩こりや視力の衰えなどもあり、疲れやすく働く気力が落ちてきている」この発言から、うつ病(抑うつ)や更年期障害、自律神経失調症のように診断され、「少し休んでみたら?」と言われ、お薬を処方されるのではないかな…。

では、心理職としてこのケースを扱うとどうなるでしょうか?まずは、感情の言葉を拾います。「ついていくのがやっと」「続けることは難しいと感じている」「働く気力が落ちてきているような気がする」、そして、一人息子は地方に転勤で、残された「自分」は一人暮らしになった、という相談者(クライアント)の背景に注目します。つまり、テーマは「喪失体験」、このケースでは「空の巣症候群」になります。「バーンアウト(燃え尽き症候群)」にも似ています。どちらも、「身体症状」「精神症状」を示し、身体症状は、肩こり、食欲不振、疲労感、不眠などで、精神症状は、寂しさ、虚無感、鬱傾向、目的喪失、焦燥感、やる気減退などです。カウンセラーは共感的にクライアントに寄り添い、クライアントのライフストーリーについて受容し傾聴していきます。クライアント自身が今まで語ることができなかった内的な「想い」を言語化することにより、頑張ってきた自分、何とかやってこれた自分を認めることができ、心は整理され、カタルシス(浄化作用)が得られます。これらの作業を、「喪の作業」と呼びます。それから、何か「儀式」のようなものがあると区切りをつけやすくなるといわれています。引っ越しや転職などですが、よく失恋をすると髪を切ると言いますが、あれもその類です。ただし、回復を急いではいけません。案外、時間がかかるものです。

キャリア支援、医学的支援、心理的支援のいずれにしても共通になるのは、「共感的理解」という視点です。「共感的」というのは、「あたかもその人であるかのように感じること」ですが、これが難しいのです。同情や哀れみではなく、「共感」です。表現としては、「受容(認める)」ということになります。

当オフィスでの国家資格キャリアコンサルタント試験のロールプレイ対策で最も大切にしているのが、この「共感」、つまり、ありのまま認める(受け入れる)になります。 それではまた。

中里文子

※ 「むうふう」は、NPO法人こころんプロジェクトへ事業移管いたしました。


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