(代表中里文子のコラム/2019.3.20)

ガールズトークでよく耳にする会話、A「絶対内緒にしてね、絶対だよ!」 B「大丈夫、私口が堅いんだよね、絶対誰にも言わないから信じて話して!」 A「そう、よかった!あのね…」

Aちゃん、本当に「よかった」のでしょうか?口が堅いとは、「言うべきでないことをむやみに他言しない(大辞林)」ことで、対義語は「口が軽い」です。口が堅い人を見分けるポイントとして、主に以下の2点が挙げられます。

  • 他者のうわさ話や悪口ばかりを言い、「~らしい」というように憶測で話をしないか?
  • 「大丈夫、口が堅いから」と自ら発言していないか?

そもそも、信用できる人は「秘密を守ること」を前提にしていているため、自身を口が堅いと言い訳する必要がないのです。そして、他人のうわさ話や悪口を言う人は、別な人にはあなたの悪口やうわさ話をする可能性が高いのです。

人が自分のみ知っている「秘密」を守ることは、想像以上に心が重く、苦痛を伴います。悪いことをしたことを隠し続けるのは、心を侵略して耐え難いものです。「リニエンシー:leniency」という言葉がありますが、犯した罪について、本来値するよりも軽く処罰することをいい、違反したことを自白すれば、本来の罰よりも減免するというものです。葛藤が生まれますね、告白すべきか黙秘し続けるべきか…。

2018年9月から、消費者庁「内部通報制度に関する認証制度」がスタートしました。「リニエンシー(課徴金減免)制度」の導入が挙げられますが、これらの制度の根底にある理論は、心理学の「囚人のジレンマ・ゲーム理論」によります。

2人の囚人A、Bが互いに黙秘を約束して、それぞれ別な部屋に入れられている状況で、

  1. AとB互いに協力(二人とも黙秘)⇒ AとB協力しないより良い結果(懲役2年)
  2. AかBどちらか一方が(黙秘)、もう一方が(自白)⇒ 自白(無罪)、黙秘(懲役10年)
  3. AとB互いに裏切り(二人とも自白)⇒ (懲役5年)

さて、ここでの心理として、相手より先に自白するインセンティブ(誘因)が生じますね?

このゲーム理論を応用して、「内部通報制度」は運営されています。ここでは、自主的な通報者に対する懲戒処分等の減免が提唱されています。ただし、ここで肝心なのは、「通報者が守られるかどうか」に掛かっています。通報を行ったために不利益を被るとなれば、この制度はうまく機能しませんよね。

ハムレットの名言、“To be, or not to be, that is the question.”「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」は主な日本語訳ですが、文脈から訳せば、「いったいどうしたらよいのか、問題はそこだ」のようです。そう、2つの選択肢の狭間で葛藤しているのです。悩ましいですね。

日本語では、「口が堅い」ことは良いことと捉えられますが、度が過ぎると「口を閉ざす」になり、「口を開こうとしない」になってしまうと、イメージはぐんと悪くなりますね。

心理カウンセラーの職業倫理として重要なことの一つに、「守秘義務」があります。ただし、例外もあります。「身体や生命の保護」に関するときには適切な措置を講じる必要があるからです。

当オフィスでは、安心で安全な場の提供と、生きづらさに寄り添う心理療法カウンセリング(認知行動療法、精神分析的心理療法など)や心理検査を用いた自己理解の作業を行っております。医療との連携もありますのでお気軽にお尋ねください。詳細は、HPを是非、チェックしてみてください。

それではまた。

中里文子


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