(代表中里文子のコラム/2020.1.8)
近年、内閣が「働き方改革」の実施を宣言したことで、日本人の働き方が見直されるようになり、同時にワーク・ライフ・バランスについても見直されるようになってきました。その背景にある主な要因の一つとして、「少子高齢化」が挙げられます。
ワーク・ライフ・バランス(work–life balance)とは、「仕事と生活とのバランス」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できること」と定義されています。つまり、別な見方をすれば、生活を充実させることにより仕事のパフォーマンスや効率が向上し、短時間で仕事の成果を出し、プライベートに時間を費やすことができると捉えることもできます。
仕事・労働には主に2つの主要な意味合いがあります。その一つには、生活の基盤を作ること、つまり賃金を得るための仕事であり、暮らしを支える重要なものです。もう一つは、自己実現のための仕事、つまり充実した生活・人生を送るためであり、仕事や労働にやりがいや生きがいを見出すという重要な意味があります。その2つを同時に満たすことはなかなか難しく、この時期は収入を重視し、この時期からはやりがいを重視しよう、といった具合に、人生の中で大きなシフトチェンジをすることも一つの考え方です。
仕事をしなければ収入が得られず経済的困窮の原因となり、逆に時間の大半を仕事に費やす長時間労働では心身の健康を害するほか、家庭や地域とのつながりを希薄にする原因ともなります。これらを両立するには、仕事(work)と生活(life)のバランスを取ることが必要になります。
しかし、近年は仕事のために私生活の多くを犠牲にしてしまう働き方などで、心身に疲労を溜め込みうつ病など精神疾患を患ったり、家庭を顧みる時間がなくなり家庭崩壊などの状況に陥るなど、深刻な事態も多く報告されています。
こうしたことから、仕事と生活のアンバランスが原因で引き起こされる多くの問題を軽減しようと、「ワーク・ライフ・バランス」が支持されるようになりました。
しかしながら、ITの発達とともに一昔前とは生活の環境が大きく変わり、今の時代、ワークとライフのバランスをとることは現実的な解決方法とは言えなくなってきました。パソコンやスマホなどの普及による、メール、ワークチャット、オンライン会議などを駆使すれば、別にオフィスにいなくともある程度仕事はこなせる環境の中で、ワークとライフを線引きして切り分けることは難しいのではないかとの懸念もあります。そもそも、自身のスマホから仕事の一切の情報を遮断することは不可能ではないかとさえ思います。そうであれば、働き方改革はもう少し違った方向からのアプローチの必要があるのではないでしょうか。
仕事と生活を「分けない」という考え方は、もしかしたら今後の働き方の主流になってくるのかもしれません。海外ではすでに取り入れられている考え方です。「ワーク・ライフ・インテグレーション」という考え方です。以前は、「アフター5」という言葉もありましたが、これからは、仕事とプライベートを分けること自体、意味がなくなってくるのかもしれません。キッチリ分けようとすればするほど、もしかしたらストレスを生むこともあるでしょう。だとしたら、分けずに連動することもありでしょう。例えば、子どもの保育園お迎えの後に家のリビングでオンライン会議に参加するなどが、ワーク・ライフ・インテグレーションの考え方です。
これからは、「仕事」と「プライベートライフ」のどちらも優先できる働き方を目指していくことで、個々人がストレスを軽減し、自分を大切にしたより豊かな仕事人生が送れるのではないかと思います。自分に合った仕事とプライベートの棲み分けを、一度考えてみるのもいいかもしれませんね。
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