(代表中里文子のコラム/2022.11.24)

冬に向かうこの季節になると、学生相談の中では圧倒的に「就活」に関する相談が増えてきます。「自分は社会人になれるのだろうか」「自分を採用してくれる会社はあるのだろうか」「そもそもエントリーシートの書き方が分からない」など、就活に対する不安感は想像以上に大きいようです。

コロナ禍において特に就職試験の一部(適性検査など)はウェブ上で行われることも多く、昨今のウェブ試験の「替え玉受験」は「ああ、なるほど」と思ってしまうところもあります。ただ、これを防止するには、企業側が莫大なAIによるチェック機能を導入しなければならないし、そのコストは計り知れない膨大なものとなります。しかも、次々網の目をかいくぐって「悪事」は形を変えて行われるわけなので、「キリがない」というのが本音だと思います。私だったら、その先の何回にも及ぶ「面接試験」での選考を強化し、選考のどこかの段階で私たちのような心理専門家を導入してみることも一つかもしれないとも思います。だからと言って専門家であれば絶対に見抜ける…ということではありませんが。

このような「就活」の現実において、多くの学生たちが心を病んでしまうほど不安感に苛まれることは理解できないではありません。「不合格」「不採用」の文字は視覚的にも心に刺さり、心がくじけてしまいます。「恐怖」以外の何ものでもなく、「自分は誰からも必要とされていない人間だ」と落ち込むのも無理ありません。

不安感には、「状況不安:不安の対象はわかっているが、どうすればいいのか分からないこと」と、「感覚不安:対象がはっきりせず、その出来事(刺激)に耐えられないこと」がありますが、就活は後者で、不安感が「漠然としている」ことが特徴です。人は、漠然としたもの(見えない敵)に対して対処方法が見えてきませんが、その対象や敵の姿が見えてくれば対策はある程度でき、不安感は軽減します。漠然とした不安感への対処方法は、「不安に思うことを紙に一つずつ具体的に書き出してみる」ことが有効になります。そうすると、何が相談できることなのか、何が勉強や資料を集めることで解決しそうなことなのかが見えてきます。

また、就活の初期に取り組む「自己分析」は、自分自身を客観的にとらえるという意味ではとても重要になります。自身の適性や強み・弱みが見えることで役に立つことは多いはずです。しかしながらそれを鵜吞みにしてしまうことはもったいない結果を生むこともあります。例えば、大手レストラン飲食系で働きたいという夢があったとして、自己分析シートでは「手先を使う仕事には向かない」などと出たからといって志望先を変える必要はないと思います。調理などには向かないかもしれませんが、嗅覚を使ったソムリエやフロアーでの接客は得意であることもあるわけです。会社での仕事は専門職や職人でない限り、自身の「強み」を活かせる場はあるはずです。特定のことにこだわらず、やりたいと思うことの中で、自分ができることを探していけばいいのです。

それでも就活の最中は何度も「不採用」という文字に打ちのめされ、心が折れそうになる時がありますね。まずは「自我防衛機制:心理学(精神分析)用語で、自分自身の心を守るための心の機能で、私たちは無意識的にそれを活用しています」を使います。例えば、「ああ、私の良さを見抜けないあの会社に入ったら、いつまでたっても評価されずきっと苦しんだよな。もっと気が合う会社があるはずだから、入らずによかったよ」などです。そう考えることで、自身の人格が否定されたとか、ダメな部分を面接官に見抜かれたなどと落ち込む必要がなくなります。言い訳のようですが、でも本当のことですね。相性や運だったり、またはタイミングだったりすることは大いにあり得ますね。

それでも心が折れそうになったときは、「しばし(1ヶ月など期間を決めて)就活から離れてみる」ことは大事です。天気の良い日に自転車に乗って隣町まで足を延ばして散策してみる、大学の友達ではない趣味で繋がっている友達とおしゃべりする、いつもと違ったジャンルの本を読んでみるなど、就活中とは違った日常を送ってみることをお勧めします。気持ちをいったん就活から切り離すことで、新たな領域の会社に気付いたり、再募集をかけてくる会社に出会ったり、あなたの良さを見つけてくれる会社や気の合う会社との出会いは必ずあるはずです。「不採用」はあなたの人格否定ではないのです。ただマッチングの問題なのです。就活生の皆さん、負けずに頑張れ!

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、少人数の従来の形でのセミナーと、リモートでのWebカウンセリングや大好評の「自分探し講座」などのZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてみてください。また、弊社公式LINEアカウントでは、セミナー情報などを随時配信しております。是非、弊社公式LINEアカウントに「お友達登録」してみてください。

皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子


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