(代表中里文子のコラム/2018.2.20)

首都圏の大学生(2~4年 男女)116人を対象に実施したアンケート調査(NPO法人Check、2013)では、「大学に入学した理由(複数回答)」として、「就職のため(50%)」が最も多く、続いて「学歴取得のため(47.4%)」「学びたい学問、資格のため(40.5%)」となっています。

また、「自分自身の学歴は気になりますか?」の問いには「はい75%」、「学歴は就職活動や将来において大きく影響するものだと思いますか?」では「はい77%」であり、大学へ行くことと将来の仕事との関係が密接に影響していると考える学生が少なくとも半数以上を占めていることがわかります。しかしながら、「就職活動に向けて何らかの準備をしていますか?」の問いでは、「はい22%、していない73%、就職しない5%」であり、ほぼ4年間、将来の仕事について真剣に考えることをせずに何となく学生生活を送り、例年、卒業間際に慌てて就職活動を始める学生も決して少なくはないこともわかっています。

学生の中には、「いい大学に入ればいい企業に入れる」という一昔前の伝説がいまだに根強く残っており、いい大学(一流の、または有名な)に入ることが目標となるため、学んだことが将来の自身のキャリア(仕事)に結びついてこないことが多いようです。

一方、企業からの視点でみてみると、企業は株主のために利益を稼ぎ出す使命があり、利益を生み出さない人材は必要ないわけで、いくら学力が高い大学を卒業していようと就労に目標(キャリアビジョン)を持たずに4年間過ごした学生は、現実的には採用したくはないのです。

アメリカの発達心理学者エリクソンによれば、「青年期」は子どもから大人へ移行する非常に重要な時期であると同時に、「自立」を目的とした社会人としての第一歩の不安定で様々な問題を抱える時期でもあるとしています。また、エリクソンは「青年期」の発達課題を、「アイデンティティ(自我同一性)の確立」としています。アイデンティティとは、人生における自分の「核」となる自我のことで、アイデンティティを確立していくには、自分自身の特徴を把握し自分自身で生きているという内面的側面(個性化)と、社会の一員として他者と協調し生きる社会的側面(社会化)の両側面が必要となります。

社会の一員になる、つまり社会人としての自立について、大学生であれば学生時代にちょっと立ち止まって考えてみる時間を持つことはとても大事なことではないかと思います。特に、前述の「個性化」と「社会化」について、「個性化」であれば自己理解になりますが、自身の強みや長所は何だろう、好きなことや関心があることは何だろうということについて、また、「社会化」であれば仕事・職務内容理解ということになり、自分はどういう職業に就きたいか、どう働いていきたいかについて、仕事の持つ2側面(経済的側面、自己実現)からじっくり考えることが必要になります。

「社会人になること」について考えるのは、大学生を含む青年期ではなく、本来であればもっと以前の高校生くらいの「思春期」頃から、授業の一環としてキャリア教育をしっかりと組み込んでいく必要があると思うのですが、現状はまだまだそこまで至ってはいないようですね。

当オフィスの国家資格キャリアコンサルタント試験対策講座で練習を積んで資格を取られた方々も、大学のキャリアセンターや青少年就労支援の現場で活躍されています。現場で働く方々の声は、とても勉強になります。

それではまた。

中里文子


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