(代表中里文子のコラム/2018.3.20)
強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder: OCD)の特徴は、「強迫観念(自分の意思に反して不安や不快な考えが浮かび、抑えようとしても抑えられなくなる」と、「強迫行為、儀式行為(例えば手を洗う、物事を確かめるなど特定の行為を繰り返し行う)」です。その考えをなくそうと無意味な行為を何度も繰り返すことで自分や周りの人の日常生活に支障が出てしまいます。
強迫性障害は、思春期、青年期(20歳代)に起こり、男女差はなく、経過の中で3分の2くらいがうつ病を発症します。現在の日本の社会のように、「除菌」「抗菌」など、清潔にこだわる状況下では、強迫性障害はより発症しやすいのではないかと言われています。
強迫行為には、主に以下のようなものがあります。
・「不潔恐怖+洗浄強迫」長時間手を洗う
・「確認強迫」スイッチを切ったか、鍵を掛けたかなど気になり、繰り返し確認する
・「縁起恐怖」縁起をかつぐ行為などにとらわれ、守らないと悪いことが起こると思いやり直す
・「不完全恐怖」手紙を投函した後で書き落としがあったのではと郵便局に問い合わせるなど
・「収集癖」本や空き箱など古くなり捨てようとしても、後で必要になるのではと捨てられずに部屋が一杯になってしまう
いずれにしても、特定の観念や行為に限りコントロールができず日常生活に支障をきたします。
ばかばかしいとわかっていながらコントロールできず止めることができないため、苦しく辛い病気です。しかし、その原因は現在でもまだわかっていませんが、親やきょうだいに強迫性障害があるとそれを起こす可能性が高くなるといわれています。現在の有力説は、進化生物学的な説明とセロトニン仮説であるため、治療としては「薬物療法」(三環系抗うつ薬:クロミプラミン、SSRI:デプロメール、ルボックスなど)と「精神療法」(認知行動療法)になります。
精神療法では、「洗う回数を減らす」のではなく、「全く洗わない」ということを期間を決めて行います。アルコール依存症に例えるとわかりやすいですが、「お酒の量を減らす」のではなく「断酒」をしますね、それは、コントロール(加減)ができない病気のためです。確認強迫の場合は、確認しきれないほどの電化製品のスイッチを用意し、消し忘れても何も問題が起こらないことを学習していきます。不潔恐怖の人が汚れにさらされるのに慣れてもらうという「エクスポージャー」も主要な治療方法になります。
家族が心掛けることとしては、強迫行為を叱らない、無理に止めさせない、病院へ行くことを促す、協力者として寄り添う、などですが、逆にしてはいけないことは、巻き込み行為(その行為を一緒にやること)、病気に対して批判的な態度や言動などとされています。ただし、家族がしんどくなったときには、少し距離を置くようにして、なるべく早く専門家につなげるようにすることが重要です。
薬物療法や精神療法(心理療法)により、約8割の人が日常生活に支障がない程度にまで回復しますが、なかなか治療へつながらないケースがまだまだ多くみられます。適切な治療の第一歩は勇気がいりますが、まずはご相談にいらしてみてください。
それではまた。
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