(代表中里文子のコラム/2021.11.30)
他者からの些細な言葉に傷ついたり、ちょっとした匂いや音や光が気になり立ち止まってしまったり…自分は何でこんなにも敏感で不安で胸がざわざわしてしまうんだろうと思っているあなたは、もしかしたらHSP(過敏な気質)なのかもしれません。
「昨日のレポート、一か所誤字があったよ」と上司から言われただけで、夜なかなか眠れなくなってしまったり、「忙しければほかの人にやってもらうからいいよ」という言葉に『ダメなやつ』『頼りにならない』と思われたくない一心で「やれます」と言って残業をしてしまったり…。 友だちとの会話で少し沈黙が続いただけで、「何か話さなきゃ」「こいつと一緒に居てもつまんないと思われるんじゃないか」と常に話題を探してしまうなど、多かれ少なかれ、HSPは何らかの生きづらさを感じているようです。
HSP(Highly Sensitive Person)は、心理学者のエレイン・N・アーロン博士が提唱した概念(あくまでも気質を指し、疾患や障害などとして確立されてはいません)で、SPS(感覚処理感受性:sensory-processing sensitivity)が高い人のことを指します。アーロン博士によれば、HSPは社会の15~20%程度は存在し、「痛み、大きな音、まぶしい光が苦手・強い匂いに敏感」「刺激に敏感すぎて不安度が強い」「とても疲れやすい」「共感力が強い」といった特徴があり、人生に対する満足度と自尊感情の低さも明らかになっています(2020)。これらの特徴は、発達障害の人の特徴と重なる部分も多く、「こだわりの強さ」「知覚過敏」といった特徴で発達障害傾向と診断されている人の中には、HSPが含まれている可能性もあると言います。
あらゆる刺激や物事の細部にまで神経を張り巡らせ敏感に反応してしまうHSPに比べれば、細かいことは気にしない、ちょっとの変化はどうにかなるし、いつもと違うことにも無頓着で気がつかない人の方が、どう考えても楽に生きられそうだし、不安感もさほど抱かず傷つくことも少ないでしょう。いわゆる「鈍感力」が求められるゆえんです。
しかしながら、性格特徴や気質にはネガティブな側面だけではなく、ポジティブな側面も持ち合わせているのです。例えば、「マイペース」と言えばとてもポジティブな側面になりますが、「自己中心的」と言えばネガティブになりますね。同じ特徴がよく出たり悪く出たりするわけです。つまり、自分自身の特徴を正しく理解し、その特徴を「良さ」として発揮すればいいのです。「自分が変わらなくちゃ」と思うとしんどいですが、このままでいいんだ、良さなんだと肯定的にとらえられれば、生きづらさも主観的幸福感に変えることもできるのです。
「匂い、音、光、触感など5感覚に敏感」は、「味や光などの違いが分かる、聴き分けられる」といった職人や芸術家などの職業には欠かせないもので、「違いや変化に敏感」は、「異常に気づける、相手の反応に気づける」という研究職やサービス業などには必須の条件になります。「共感力の強さ」は「役者」ですかね?ただし、「公人(メディアにさらされる人。公の人・代表)」になると、メディアに翻弄され苦しみますので注意が必要です。
ネガティブ要因をポジティブな持ち味として表すことができれば、感覚や感受性の強さは、豊かな感情や高い共感力として、自身の特性や持ち味、専門性としてのびのびと発揮され、「個性」として欠かせないものとなるのでしょう。それには、ネガティブ要因を受け入れ、ポジティブ要因として捉えていく必要があります。そうです、「自己理解」が必要になるわけです。その上で、自分自身の「トリセツ(取扱説明書)」を作っていくことがコツになります。
ここで、3つの対処方法をご紹介しますね。参考にしてみてください。
(1)「高い共感力」による不安感を軽減する
HSPは大勢の中でそれぞれの意見や考え、感情を聞いていると、どうしても皆に寄り添い共感してしまうため、「自分自身の本心」を見失い混乱してしまうのです。そんな時は時間をおいてひとりになったときに、ノートやメモ帳、またはスマホの「メモ帳機能」などに、「出来事・事実」と「その時の自分の気持ち」を分けて書いていきます。特に、感情の言語化により、また視覚化により、自身の気持ちの整理をしていくことが可能になります。(※当オフィスでも、認知行動療法として、カウンセリングの中で気持ちの整理のワークの訓練も行っています)
(2)「何にでも敏感に反応してしまう」ことで疲れてしまうことへの対処方法
神経過敏で感受性が強いHSPは、自分の周りにある刺激は全神経で受け取り、徹底的に情報処理してしまうため、情報量が多いと疲れてしまうのです。これは発達障害の人の特徴と同じですので、対処方法も同様になります。「情報量を制御する」ことです。具体的には環境を整えます。例えば、静かな部屋で、使い慣れた机(場所)で、周りに人がいないことも大事になります。気が散るものを置かない、スケジューリングをする(10~11時まで:〇〇の資料作成をする、11~12時:5つのメールに返信する)なども効果的です。基本はマルチで動かず、1対1対応をします。
(3)新たなことへ慣れるまでは敏感で不安感が強いことへの対処方法
自身が「心地よい」と思うものと「不快」に感じることを明確にし、「不快」な環境や要因をできる限り排除していきます。不快なことに「慣れろ」というのは難しいです。その前に潰れてしまいます。例えば、どうしても合わない同僚や先輩が居る職場では、机の配置を変える、チーム替え、部署異動などが効果的です。自分自身の心地良さを追求することは、我ままでも逃げでもありません。ただし、自身がHSPの特徴を持つことの自己開示が必要になります。職場の産業医などを通して上司に伝えてもらうことが有効です。
アーロン博士が作成した「HSPチェックリスト」です。ご参考程度に。
http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsp.html
引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、少人数の従来の形でのセミナーと、リモートでのWebカウンセリングや大好評の「自分探し講座」などのZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてみてください。また、弊社公式LINEアカウントでは、セミナー情報などを随時配信しております。是非、弊社公式LINEアカウントに「お友達登録」してみてください。
皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。
それではまた。
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