(代表中里文子のコラム/2017.9.20)

心気症という疾患を聞いたことがありますか?「病気不安症」とも呼ばれているように、自分の健康状態に対する不安から、些細な症状(頭が痛いとか、胃がむかむかするなど)をきっかけに「自分は重大な病気にかかっているにちがいない」という思いにとらわれてしまう疾患です。

心気症の人は病気に対する不安が高まるため、病院で医師から「特に異常はありませんね」と診断を受けても安心できず、「検査ではなかなかわからない異常なんだ」「医師が誤診しているのかもしれない」と考え、「自分は何か重大な病気に違いないのに…」というもどかしい不安が続きます。そのため、あちこちの病院を頻回に受診するドクターショッピングを繰り返しますが、どこで受診しても「異常なし」の結果しかもらえないため不安が続き、心が休まることはなく、生活に支障をきたすことになります。

心気症は「ヒポコンドリー(Hypochondria)」とも呼ばれ、ギリシャ語で「心窩部:みぞおち」を意味し、ちょうど心臓や胃のあたりを指します。症状としては、何となくだるい、胃のあたりがむかむかする、吐き気が続くなど、あいまいな症状を指す場合が多くみられます。また、心気症の人は、症状に対する感覚が過敏になっている事が指摘されています。例えば通常の方であれば「お腹が押される感じ」としか感じない刺激であっても、心気症の人には「腹痛」と感じられたりします。これは不安や過多なストレスにより、感覚が過敏になっているためだと考えられます。

一般的には症状は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、慢性的に続くといわれています。20~30歳代に多く見られますが、その約半分は次第に改善していくようです。その後、ほとんどは青年期後期あるいは成人期前期までに回復します。

治療としては薬物療法ではなく、心理療法(カウンセリング)や精神医学的治療になりますが、特に日本では、一般的にはなかなか受け入れられないのが現状です。なかでも、精神分析的心理療法、認知行動療法、催眠療法、森田療法などが効果的です。

さて、皆さんの周りでドクターショッピングをしているような方がいらっしゃれば、心気症を疑ってもいいのかもしれません。くれぐれも「仮病」と決めつけず、まずは、その苦しみを受け止めて認めてあげて、それから質のいいカウンセリングを紹介してみてもいいのかもしれません。

それではまた。

中里文子


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