(代表中里文子のコラム/2020.4.3)

 

今、誰もが先の見えない不安に包まれながら日々の生活を送っている状況の中で、手探りでこれからの人生設計に頭を悩ませていることと思います。しかしながら、不安な感情はこころを次第に侵略し、やがては身動きが取れなくなってしまうという状況に陥ります。

人が不安を感じると、まずはからだに現れます。例えば、頭痛やめまい、全身に脈拍を感じたり、手足が冷たくなったり、ソワソワしたり…。また、集中力に欠け、「うわの空」の状態が続くこともあります。そういった身体化された言動は、いわばこころを守るための「警告」であり、「防衛反応」でもあるのです。

発達に凸凹があるいわゆる発達障害(自閉症スペクトラム障害)のお子さんなどは五感に偏りがあり、ある感覚が飛び抜けて敏感であること(感覚過敏)も少なくありません。そのため、多くの人には気にならないような音や出来事でも敏感に察知してしまい、人一倍不安や緊張を感じてしまうことがあります。そうした不安や緊張を遮断し気持ちを安定させるために、「常同行動」をとる場合があります。

「常同行動」とは、無目的な反復的・儀式的な行動や姿勢などのことで、単純なものでは、貧乏ゆすり、唇を舐める、爪を噛む、足をすりすりするなどですが、発達障害のお子さんなどでは、手をひらひらさせる、飛び跳ねる、意味なく手をぱちぱちたたく、同じ場所を行ったり来たりするなどがみられます。また、常同行動は認知症でも起こります。特に、前頭側頭型認知症では前頭葉や側頭葉前方の萎縮が生じるために、感情をコントロールしたり理性的な行動ができなきなくなり、とてつもない不安感に苛まれます。その症状としては、いつもと同じように同じ場所にものを置く、家の中を同じ順序で歩き回るなど、決まった行動をとることで不安感を軽減し、こころの安定を図っているようです。

常同行動自体が特に問題となるわけではありませんが、それが社会生活上著しい問題につながる場合や、周りの人たちがその常同行動により不快感に苛まれたり疲弊してしまう場合は、公的な支援や医学的な対処が必要になります。

「不安感」の正体は、「問題に巻き込まれていてどうしていいかわからないこと」なのです。だとしたら、その対処方略は、①何が不安にさせているかに焦点を当てて理解する ②不安な気持ちから距離を置く、が効果的であるとされています。これら2つの方略を具体的に示した心理療法があります。

①は「フォーカシング」という心理療法の技法で、「まだ言葉にできない、体で感じられる違和感や微妙な感覚(例えば、「何か胃の辺りがキリキリする」「肩が重苦しい」など)に注意(焦点)を向け、それを言語化していく」ことでその不安の正体が何なのかが見えてくるというものです。例えば、「ああ、肩が重苦しいって感じていたのは、課長に昇格したはいいけど、部下をまとめられていないって感じているからだな…」「課長の役目が果たせていないってことか」「う~ん、どうしたらいいんだろう…」「そうか!営業部の課長はうまく部下とコミュニケーションとってるから、何かうまくやるヒントがあるのか聞いてみればいいんだ!」と、「肩が重苦しい」感じにフォーカス(焦点)して言語化していくことで不安の原因が明らかになり、その対処方法に自ら気づくというものです。

②は「マインドフルネス瞑想法」や「ブリーフセラピー」といった心理療法の技法で、「外在化」「脱中心化」と呼ばれる自分の体験から少し距離を置くという方法が中心になります。マインドフルネスでは、non-judgmental(判断を加えない「being:あること」)、present-centered(現在の瞬間を中心に置く「doing:すること」)の2つが中心となり、現在の瞬間を中心に置くことで、過去や未来への関連付けでの評価や原因探しをやめ、今現在起きていること(気持ちや感情)だけに注意を向けるというものです。

如何でしょうか?不安に押しつぶされそうになったら、不安に怯えている自分自身の「こころ」に目を向けてあげることも大切かもしれませんね。「フォーカシング」や「マインドフルネス瞑想法」「ブリーフセラピー」に関しては、また別の機会に詳しくお伝えしますね。

新型コロナウィルスによる拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング(一部)・セミナーは少なくとも4月中旬は中止とさせて頂いておりますが、WebカウンセリングやZOOMによるセミナー等、リモートでの対応は順次、ご用意しております。このような時だからこそ、どんなに小さなことでもぜひご相談ください。解決への道筋は必ず見つかります。HPなどチェックしてご利用してみてください。併せて、皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子


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