(代表中里文子のコラム/2022.4.25)

「どうして 歴史の上に 言葉が生まれたのか  太陽 酸素 海 風  もう十分だった筈でしょう」

椎名林檎さんの「本能」という曲の一部です。刺激的でエキセントリックな印象の彼女から吐き出される「言葉」からは、とても多くのメッセージが読み取れます。ヒトが地球上で動物として生きるための必要十分なもの(物質?)以外に、「言葉」をもったことで「人間の欲望(衝動・欲求)」が生まれたんだ、といっているのでしょうか。

そしてこう続きます。

「淋しいのはお互い様で 正しく舐め合う傷は  誰も何も咎められない 紐解いて命に擬う(なぞらう)」

淋しい」は、人間が社会的生き物であるため生じた「感情」であり、「独り」でいることに耐え難い苦痛を伴うことを表現し、だからこそ、「正しく舐め合う傷」は「共依存」という関係性を肯定しているのかもしれません。「正しく」が気になりますが…。「誰も何も咎められない 紐解いて命に擬う」は、淋しさ、孤独感、切なさなどの感情や情動は「本能」に仕組まれたことなのだから、それをお互い「正しく舐め合う」行為は誰も非難したり嘲笑したりすることはできないはず、と語っているようです。ちなみに、共依存の関係は、「相手から依存されることに無意識のうちに自己の存在価値を見出し、そして相手をコントロールし自分の望む行動を取らせることで自身の心の平穏を保とうとすること(信田さよ子、1999)」であり、結果として相手が自立する機会を阻害しているという自己中心性を秘めています。つまり、「貴方のためだから」とがんじがらめにしておいて、自分自身の自己肯定感を保ち満足を得るというパーソナリティの病理の一つです。

ところで、「本能」って何でしょうね。

動物行動学専門の小原嘉明博士は、著書『本能―遺伝子に刻まれた驚異の知恵』のなかで、「動物が生まれつき持っていると考えられる不思議な行動能力」と説明しています。つまり、動物が生まれてまだ誰からも教えられていないが生命を維持するために必要な行動、たとえば、口に食べ物(ミルク)を入れると「飲む」ことをし、生まれたばかりの馬は「立ち上がりヨタヨタ歩く」などを指します。

また、心理学の観点では今はあまり「本能」という言葉を使わず「情動」という言い方をすることが多いですが、その代表的なものが、フロイト,S.(精神分析学)が提唱した概念で、本能(衝動 Trieb)を心の相互作用(精神力動 psychodynamics)の重要概念として位置づけ、「生の本能エロス)愛、生殖、生産」と「死の本能タナトス)破壊、衰退、死滅」が相克する(二つのものが互いに争うこと)として示され、それぞれ内と外へ向けられる(自己愛×他者愛、自己破壊×他者破壊)本能(衝動)として提唱されました。生(性)の欲動はエロス(愛)=種族維持という人間の存在意義にかかわる本能として理解しやすいですが、死の欲動(タナトス)の解釈は学者により様々ですが、「攻撃性」として競争、闘争、自傷行為(自己破壊行為)、サディズム・マゾヒズムなどのように説明されます。そして、これらの行為は「死の本能」として人間に仕組まれているのだとしています。

プロモーションビデオの中で、椎名林檎さんはナース服に身を包み、拳でガラスをパンチして叩き割るシーンがありますが、ガラスは「本能」を抑圧する超自我?(モラル)でしょうか、林檎さんはナース(看護師)として、表面的な「ことば」で本能を隠し格好つける病におかされた人々を「治療」し、もっと本能をあらわにしなさいとガラスを「破壊」します。「治療」は生(エロス)、「破壊」は死(タナトス)、つまり、本能を意味するとは考えすぎでしょうか…。

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皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子


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