(代表中里文子のコラム/2021.1.31)

 

私は仕事柄、いつも「どうすれば人は少しでも安心感を得て、また前に進めるようになるんだろう」と考えます。安心感を与える魔法のような言葉ってあるんだろうか?と試行錯誤しながら探してきましたが、「言葉」自体が問題なのではなくて、誰がその言葉を発したかが問題なのではないかと思うようになりました。

例えば、新型コロナウィルス感染が拡大していく不安な状況の中で、私が「ワクチンを打てばコロナウィルスには感染しませんよ」というのと、有名な医者が「ワクチンを打てばコロナウィルスには感染しませんよ」というのでは、安心感が全く違ってきます。つまり、安心感を得るということは、信用や信頼感と深く関わりがあるようです。その言葉を発した人の「背景」や「ライフストーリー」がとても重要になってくるのです。

そういった意味では、「制服」を着ることも、信頼や安心感と繋がっていますね。警察官や医者の白衣、コックの帽子などがそうです。ただし、医者でない人が白衣を着たとしても人は偽医者を見抜きます。その偽医者には医者として学び訓練を受けた経験がない、つまり、医者としての「背景・ライフストーリー」が伴わないため、偽医者の言葉からは「安心感」が得られないのです。「なんか変じゃない?」「本当かな?…」といったように。

スタンフォード監獄実験(P.ジンバルドー1971)」という心理学実験があります。新聞広告で募集した一般の人(精神的に安定していて反社会的行為に関係したことのない人)からランダムに「10人の囚人」「11人の看守」という役割を与え、2週間の予定で役割実験を行いました。

しかしながら、この実験はわずか6日で中止となりました。実験開始36時間後に囚人側に不安や抑うつといった急性情緒不安定が現れ、看守側(黒いサングラスを着用。看守になる特別な訓練を受けたことのない人たち)にはすぐに攻撃的で高圧な態度や行動が見られるようになり、そのために囚人側の無気力状態が深刻になり、実験者の見ていないところでも看守役による囚人役への暴行が始まったためです。

「スタンフォード監獄実験」では、「人はある役割(権限)を与えられると、その役割に見合った行動や考え方をする、つまり、その役割が内面のアイデンティティにまで影響を及ぼす」ことが示唆されました。

人は日常的に無意識のうちに他者に対して「信用に値するか否か」を瞬時に見分けようとします。その材料の一つとして制服(コスチューム)があります。「スタンフォード監獄実験」のように、人は役割になる(制服を着る)と、例えば医者が白衣を着ると「医者であろう」とし、そう振る舞います。そしてその背景には相当量の学びと経験があって医者としてのアイデンティティがあるわけです。エキスパート(専門家)は何の根拠もない発言はできないものです。それを私たちは「知っている」からこそ、信用し安心できるわけです。

私はカウンセリング(心理療法)を行う時に、必ず「ジャケット」を着用します。スイッチを入れるわけです。たとえ電話相談でも、ジャケットを着ます。専門家スイッチを入れると、私自身の全アイデンティティがセラピストとして最大限の能力を発揮しようと努力します。

人は、安心感を得ると落ち着いてあたりを見回せるようになり、自分がどちらの方角に向けばいいのかが見えてくるため、再び前へ歩き出すことが可能になります。セラピスト(カウンセラー)としての究極の使命は、「共に居ること(Being)」であり、ただ一緒に居ることでクライアントが安心感を得られることではないかと考えます。そこには、絶対的な信頼関係が必要になります。例えば、「赤ちゃんとママ」のように…。

引き続き、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当オフィスでのカウンセリング・セミナーは、万全の感染対策を最大限に取りながら、定員を減らした少人数制・対面でのセミナーを中心に、リモートでのWebカウンセリングや大好評の内容のZOOMセミナーを複数ご用意してお待ちしております。HPなどチェックしてぜひ、弊社公式LINE@に「お友達登録」してご利用してみてください。

皆様のこころとからだのご健康をお祈りしております。

それではまた。

中里文子

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